灰なわ(勝坂)

 

 

 

灰なわ

 

勝坂の北の方に、「灰なわ」という所があります。

 

 

 むかしこの山に、たいへん親孝行なむすこが住んでいました。

 

そのころの風習では、年をとって働くことができなくなった老人は、奥山へ捨てることになっていました。

 

しかし、このむすこだけは、年とった母をどうしても捨てることができませんでした。

 

それで、こっそりと家の中にとめて、孝養をつくしておりました。

 

 

 そのころ、たまたま領主様が、「灰なわ」を持ってくるように命じました。

 

灰で作ったなわなんて、考えてみても無理なことですね。村人たちは、全く困ってしまいました。

 

このむすこも、どうすることもできませんでした。

 

そこで、日ごろ尊敬している老いた母にそのことを話しました。

 

 

 母は、しばらく考えていましたが、「それは、よくたたいたわらで堅くなったわらを作って、それを焼いてごらん。」と教えてくれました。

 

 そのむすこは、母の言う通りになわを作って、領主にさし上げました。

 

領主はとてもよろこんで、たくさんのごほうびをくださいました。その上、

 

「どうしてこの灰なわを作る方法を知ったのか。」ときかれました。

 

そこで、そのむすこは一部始終をくわしく領主に申し上げました。

 

 領主もいまさらながら老人の尊さを感じて、その後は、老人を捨てる風習をやめるようにふれを出しました。

 

 

(「ふるさと春野の伝説」より)